空き家管理ラボ

千葉の実家(空き家)を、遠方から年2〜3回だけ通って管理している記録です。草刈り・除草剤・防草シート・維持費・売却の検討まで、実際にかかった費用と失敗をそのまま書いています。

住所変更登記の義務化は空き家の所有者に何を求めるか|2年以内・過料5万円と、スマート変更登記の現在地

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2026年4月1日から、不動産の住所や氏名が変わったら変更日から2年以内に登記を直すことが義務になりました。怠ると5万円以下の過料の対象です。しかも施行より前に住所を変えていた人も対象で、その期限は2028年3月31日。
実家を出て別の場所に住んでいる——空き家の所有者はまさにこの制度の当事者です。無料で済ませられる「スマート変更登記」の今の実際の状況まで、法務省の原典で確認しました。

何が義務になったのか(2年以内・5万円以下の過料)

正式には「住所等変更登記」といいます。不動産の所有者(所有権の登記名義人)は、氏名・名称または住所に変更があったときは、その変更日から2年以内に変更の登記を申請しなければならない、というものです(不動産登記法76条の5)。

正当な理由がないのに怠ったときは、5万円以下の過料の適用対象になります(同法164条2項)。相続登記の義務化(過料10万円以下)と似た構造ですが、金額も期限も別の制度です。

項目 内容
施行日 2026年4月1日(令和8年4月1日)
期限 住所等の変更日から2年以内
過料 5万円以下(不動産登記法164条2項)
施行前に住所を変えていた場合 対象になる。期限は2028年3月31日(令和3年法律第24号 附則5条7項)
対象 所有権の登記名義人(土地・建物とも)

見落とされやすいのが最後の行です。「4月1日より前に引っ越したから関係ない」ではありません。施行前の住所変更も義務化の対象で、2028年3月31日までに直す必要があります。相続登記の経過措置(2027年3月31日)とは期限が1年ずれているので、混同しないよう気をつけてください。

空き家の所有者こそ、この制度の当事者

この義務化は「所有者不明土地」を減らすための制度です。法務省は、所有者不明土地の主な発生原因を相続登記の未了と住所等変更登記の未了の2つだと説明しています。全国で所有者不明土地が占める割合は、九州の大きさに匹敵するともいわれる規模だそうです。

ここで考えたいのは、空き家の所有者は、定義上ほぼ全員が「登記簿の住所に住んでいない人」だということです。実家を出て、別の場所に生活の拠点を移し、たまに様子を見に行く。私自身がその立場です。

登記簿に載っているのが実家の住所なのか、今の住所なのか。そこがずれていると、行政や隣地の所有者から連絡が取れません。「連絡が取れない空き家」は、管理不全空家として扱われる方向に一歩近づきます。固定資産税の住宅用地特例が外れる話は空き家の固定資産税に「免除」はある?で書きましたが、その入口のひとつがこの「連絡がつかない」状態です。

スマート変更登記は「まだ動いていない」

義務化とセットで用意されたのが「スマート変更登記」です。あらかじめ1回「検索用情報の申出」をしておけば、その後は法務局が住所等の変更を確認して職権で登記してくれる——という仕組みで、費用はかかりません。

法務省が示している流れは次の3段階です。

  • (1) 法務局が少なくとも2年に1回、住基ネットに照会して住所等の変更の有無を確認する
  • (2) 変更があった人に、登記してよいかを確認するメールまたは書面を送る
  • (3) 「してよい」と回答があった人について、順次、変更登記をする

ここまでは多くの解説サイトに書かれているとおりです。ただ、原典を最後まで読むと、そのすぐ下にこう書かれています。

「法務局が上記(1)〜(3)の手続を開始する時期については、改めてこのページでご案内します。」

つまり個人向けのスマート変更登記(職権による登記)は、まだ始まっていません。法務省「スマート変更登記のご利用方法」の記載で、このページの更新日は2026年4月30日です。
一方で法人については「令和8年5月15日以降順次」と時期が明示されています。個人と法人で進み方が違う、というのが今の状況です。

ネット上の解説には「申出をすれば転居届と連動して自動で登記される」と現在形で書いているものが少なくありません。制度としてはそのとおりですが、実際に登記が行われるのはこれからです。「申出をしたのに登記されない」と不安にならないよう、ここは知っておいたほうがいいと思いました。

もうひとつ、条件があります。海外に居住している人はスマート変更登記の対象外です。法務局が住基ネットで住所の変更を確認できないためで、この場合は自分で変更登記を申請する必要があります。会社法人等番号を持たない法人も同じ扱いです。

それでも今すぐ申出をしておいたほうがいい理由

「職権登記がまだ始まっていないなら、申出も後回しでいいのでは」と思うかもしれません。ここが、原典を読んで一番「なるほど」と思った部分でした。

法務省は、過料の判断において「正当な理由」があると認める事情を5つ挙げています。その第1類型がこれです。

「検索用情報の申出又は会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合」

申出さえ済ませておけば、法務局側の職権登記がまだ動いていなくても、義務違反を問われないという設計になっています。今の「職権登記が始まっていない」状況を、そのまま吸収する条項です。

申出の方法も、思っていたより軽いものでした。

  • 「かんたん登記・供託申請」のページからWebブラウザ上で申出ができる
  • 電子証明書は不要(所有者の生年月日・メールアドレス・不動産の地番などを入力する)
  • 書面での申出も可能。管轄が違う複数の不動産を持っていても、そのうちどれかを管轄する法務局にまとめて申し出られる
  • これから所有者になる場合は、登記申請書に氏名の振り仮名・生年月日・メールアドレスを併せて書けばそれで申出になる

実家のほかに山林や墓地まわりの土地が残っている、というのは空き家ではよくある話です。管轄をまたいで1か所にまとめられるのは、遠方から手続きする側にはありがたい設計だと思います。名義に何が残っているかを先に洗い出す手段については、所有不動産記録証明制度とは?に書きました。

過料は自動ではない(催告の端緒は2つだけ)

相続登記の期限の記事でも同じことを書きましたが、この制度でも「期限を過ぎたら自動的に5万円」ではありません。

法務省は、登記官が義務違反の事実を把握しても直ちに裁判所への通知(過料通知)は行わないとしています。過料通知をするのは、相当の期間を定めて履行を催告したにもかかわらず、正当な理由なくその期間内に申請・申出がされないときに限られます。

そもそも登記官が違反を把握する「端緒」も、次の2つが例として挙げられているだけです。

# 登記官が催告を行う端緒(例)
1 所有権の登記名義人が表示に関する登記を申請した際に、申請情報の住所等が登記記録と合致していなかったとき
2 住基ネット照会で変更が認められた名義人が、職権登記の意思確認の通知を受け取ったのに、拒否したか期限までに回答しなかったとき

「正当な理由」として挙げられている5類型は次のとおりです。

  • (1) 検索用情報の申出/会社法人等番号の登記はされているが、職権登記が未了
  • (2) 行政区画の変更等によって住所が変わった
  • (3) 義務を負う人自身に重病等の事情がある
  • (4) DV被害者等で、生命・身体に危害が及ぶおそれがあり避難を余儀なくされている
  • (5) 経済的に困窮していて登記費用を負担できない

ただし法務省は、これに該当しない場合でも個別の事案に応じて判断するとも書いています。裏を返せば、この5つに当たらないから即アウト、でもないということです。煽る必要も、たかをくくる必要もない。そういう制度だと受け止めています。

あわせて始まる「死亡の符号の表示」

これは調べていて初めて知ったのですが、スマート変更登記と一緒に、登記名義人が亡くなったことを登記簿上で分かるようにする仕組みも始まります。

法務局が住基ネットに照会して住所等の変更を確認する過程で、その人が死亡または失踪の宣告を受けたことを把握した場合、戸籍等の確認を経たうえで登記記録に「符号」を表示するというものです。

空き家を持つ側としては、少し複雑な気持ちになる仕組みでもあります。登記簿を見れば名義人が亡くなっていることが外から分かる、ということですから。ただ、隣の家がずっと空き家で連絡先も分からない——という側に立てば、これはありがたい制度なのだと思います。空き家問題は、いつも自分がどちら側にもなり得る話です。

私の場合(まだ確認できていないこと)

千葉にある実家は、父の名義です。祖父から父への相続登記は済ませてあるので、相続登記の経過措置のほうは、この実家に関しては対象外です。

では住所等変更登記のほうはどうか。ここはまだ確認できていません。登記簿上の父の住所が今の住所と一致しているのか、どこかの時点で住所を移していて登記が追いついていないのか、私は把握していないのです。

調べる方法自体ははっきりしています。登記事項証明書を取れば、登記簿上の住所はその場で分かります。この記事を書いた時点でまだ動けていない、というのが正直なところです。結果が分かったら追記します。

同じ立場の方が確認するとしたら、順番はこうなると思います。
① 登記簿上の住所が今の住所と一致しているかを確認する
② ずれていたら、変更の日から2年以内(施行前の変更なら2028年3月31日まで)に直す
③ 併せて「検索用情報の申出」をしておく(無料・電子証明書不要)
名義人が高齢の親であれば、本人が手続きできるうちに動いておくほうが確実です。この点は所有不動産記録証明制度の記事と同じ結論になりました。

まとめ

  • 2026年4月1日から、住所・氏名の変更は変更日から2年以内に登記する義務になった。過料は5万円以下
  • 施行前の住所変更も対象。期限は2028年3月31日(相続登記の2027年3月31日とは別)
  • 無料の「スマート変更登記」は制度としては始まっているが、個人向けの職権登記の開始時期はまだアナウンスされていない(法人は2026年5月15日以降順次)
  • それでも先に「検索用情報の申出」をしておけば、職権登記が未了でも「正当な理由」に当たる
  • 過料は自動ではない。催告→正当な理由なく期間内に申請なしという順を踏む
  • 海外居住者はスマート変更登記の対象外で、自分で申請する必要がある

登記の話は、空き家を「持ち続ける」ための手入れの一部です。手を入れ続けるのか、それとも別の道を考えるのか。費用の全体像は遠方の空き家をどう管理する?に、手放す側の検討は空き家を「売る」という選択肢を調べてみたにまとめています。

この記事は2026年9月2日時点で、法務省「住所等変更登記の義務化について」(令和7年10月30日更新)および「スマート変更登記のご利用方法」(令和8年4月30日更新)を確認して書いています。制度の運用は今後変わる可能性があり、とくに個人向けの職権登記の開始時期は本記事の執筆時点で未定です。個別の手続きについては法務局または司法書士・弁護士にご確認ください。